2009年01月18日

森は生きている(マルシャーク)




とある国の14歳のわがままな女王は、真冬の12月に4月に咲くマツユキソウが欲しいと言い、国中にお触れを出します。そのため国中は大騒ぎ。

ご褒美の金貨が欲しい母と娘は、代わりにいつもお手伝いのように使っている次女のままむすめを真冬の森に送り込むのですが…。

この物語の主役は、理不尽な命令で真冬の森の中をマツユキソウを探すはめになったために、偶然大晦日の晩に集まる1月から12月までの月の精に出会い、4月の精と婚約して(?)幸せになるままむすめ(すごいネーミングだね)だけど、やはり、12ヶ月の精たちが支配する「森」そのものが一番の主役ですね。

12ヶ月の精は12名、
老人が3人、中年が3人、青年が3人、そして少年が3人です。
いつも薪やソダを拾いに森に入るままむすめは、
月の精たちもみな知っていました。
彼らは気立てのいいその子を助けるために、
森の中に4月を作り出し、マツユキソウを彼女に与えます。

そんな彼女から手柄を奪って、ままははとむすめがお城に向かったものだから、女王がマツユキソウを取りに森に入ることになるのです。

人々は、月の移り変わりを自然の中で感じていたんでしょう。
1月の雪、2月の吹雪、3月の雪解け、4月の開花…
そうした自然への尊敬や畏れがこの物語の元になる民話となったんでしょうね。

僕の生まれ育った北海道は、ロシアほどではないにせよ、
豊かな自然に囲まれていたんですね。
懐かしいです。
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2008年12月17日

ティファニーでは朝食は食べられない




あ〜あ、ティファニーなんて一生行く事ないんだろうなあ。
と思わせるお話じゃありません。

「ティファニーで朝食を」と言えばオードリー・ヘプバーンが可愛かった映画が有名。
だけど、もう皆さんが知ってる通りで
ホリー(役名)がティファニーのショーウインドの前でパンとコーヒーを食べるシーンはない。
名曲「ムーンリバー」を歌うシーンもない。
ハッピーエンドでもない。

何たって、ホリー・グライトリーは奔放、気まぐれで、時には凶暴になったり、つかみどころがない。
郵便箱の名詞には【ミス・ホリディ・グライトリー『旅行中(トラベリング)』】と書いてある。
しょっちゅう部屋の鍵をなくしたと言って他の住人の部屋のベルを鳴らしたり、主人公を弟の名前であるフレッドと強引に呼んだり、
「42(才)まえの男の人になんか魅力を感じないのよ。」と言ったり、
主人公を買い物に付き合わせ山のようにピーナツバターを買わせたりする。街角で偶然であった名前のない猫といっしょに暮らしている。

まったく付き合いにくい女性に違いない。
15歳のときに拾われた、人のいい獣医ゴライトリーのもとを飛び出してしまう。
ホリーにほれ込んだO.J.バーマンが、彼女を映画スターにしようとしても、肝心の本人はオーディションをすっぽかしたりする。
そして言うんだね。自分は映画スターになんかなれっこない。
自我をすっかり捨ててしまわなければスターになどなれっこないし、
そして自分にはそれができないと。
「(略)といっても、あたしがお金持ちになり、有名になることを望まないというんじゃないの。むしろ、そうなることがあたしの大きな目的で、いつかはまわり道をしてでも、そこまで達するようにつとめるつもり。ただ、たとえそうなっても、あたしの自我だけはあくまで捨てたくないのよ。ある晴れた朝、目をさまし、ティファニーで朝食を食べるようになっても、あたし自信というものは失いたくないのね。(後略)」

この小説のティファニーはここで出てくる。
文庫本なら58ページだ。
あ、ちなみに僕の読んだ本は瀧口直太郎の訳です。
今なら村上春樹で読むのかなあ。

もちろん、ティファニーで朝食は食べられない。
それは成功の例えという事らしい。
だから、別に映画のようにむりやり朝食を食べなくてもいいのだ。
ここまで気まぐれな女に振り回されるラスティもホセも主人公もバーマンも災難かも知れないが、一方でその誰もがずるくて自分勝手な奴だとも思える。
彼らはみな自分の鳥かごにホリーを入れようとしてあがいたように見えるし、それは結局無理な話だって事も知ってる。

彼女は刑務所にいるサリー・トマトという老人(麻薬密輸業者)と結託したとの疑いで捕まり、仮釈放中の身でありながらブラジルへ旅立ち、そのまま行方不明になる。最後に消息がわかったのはアフリカらしい。
主人公は、ホリーに、彼女が捨てた猫を探してくれるように頼まれた。
彼女が去ってから、ある日、主人公はその猫が新しい飼い主の下で暮らしているのを見つけ、ホリーにも安住の地があることを願う。
そこで、原作は終わっている。

可愛い女性はいつまでも記憶に残るもんなんだね。

以前中途で断念したこの物語を今回読了した。
ホリーのイメージがかえってぼやけてしまったが、
それでよかったような気もする。
うまく言えないんだけどね。

全く感想というものではありませんので、あしからず。
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2008年11月30日

老人と海(E.ヘミングウェイ)




高校生の時、英語の宿題でこの本を原書で読んだ。
短くて、使った単語も難しくないはずなのに
翻訳には割合に苦労した。
結局訳本に頼る事になるわけだが、
何しろ訳者が福田恆存なもんだから、
(表現が)あっているのかどうか、不安だったね。

あれから30年、
今は、この本を読み直してみようかなと思っております。
僕がサンチャゴみたいになれるかわからないが。
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2008年11月16日

子供の心は帰ってこない…(「星の王子様」)




「ねえ、僕に羊の絵を描いてよ」

サハラ砂漠に不時着した主人公の前に現れたへんてこな格好をした男の子。
しきりと羊の絵を描いてくれと懇願するその子のために男は紙とペンを取り出す。

それをきっかけに仲良くなった男の子に、自分が飛行機でここに来たことを話すと、彼は笑って
「なあんだ、きみも空から来たんだ! どの星にいるの?」
と言うのだ。
そして、主人公はこのこども(王子)からさまざまな話を聞くのだ。
ここは、王子がやって来たななつめの星なのだという。
王子はいままで訪れた星の話をする。
年老いた王様が住むひとつめの星
とても小さな王子のふるさとの星。
みえっぱりの住むふたつめの星
のんだくれが住むみっつめの星
とても忙しい、しごと人間のいるよっつめの星
あかりと、あかりつけの入るばしょがあるだけのいつつめの星

王子のふるさとの星にはわがままな花が咲いている。

友達のキツネはいろんなことを教えてくれた。
王子の言葉はいろんな事に気づかせてくれる。
「星がきれいなのは、見えない花があるから……」
「さばくがうつくしいのは、どこかに井戸をかくしてるから……」

そして王子は言う。
「だいじなものっていうのは、見えないんだ……」

「ひとには、みんなそれぞれにとっての星があるんだ。たびびとには、星は目じるし。ほかのひとにとっては、ほんのちいさなあかりにすぎない。あたまのいいひとにとっては、しらべるものだし、あのしごとにんげんにとっては、お金のもと。でも、そういう星だけど、どの星もみんな、なんにもいわない。で、きみにも、だれともちがう星があるんだよ……」


彼は自分の星に帰っていく。
ヘビにたのんだのか、。
なにかが、きいろくひかっただけだった。
くるぶしのちかく。あの子のうごきが、いっしゅんとまった。
そして音もなく、そおっと倒れてしまったのだ。

この絵本を読んで考える事は多い。
気づかされる事も多い。

でも忘れてしまった。
そして今僕はこの星に生きてる。
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2008年08月25日

ソルジェニーツィンの評価




この8月3日、アレクサンドル・ソルジェニーツィンが亡くなった。
静かな死だったと言わなければいけないですかな?
この人は、スターリン体制下で、反革命分子とされた人々に対する抑圧を告発した反体制作家としてノーベル文学賞を受けましたが、
国家反逆罪で国外追放になりました。
ゴルバチョフ時代になって市民権を回復し、ロシア連邦に帰国してからの文学的活動はほとんど分かりません。
なかったのかも知れません。

「収容所列島」に代表される、卓越したドキュメンタリー作家としての評価は高かったソルジェニーツィン。
彼は、信仰心篤いキリスト教信者と、愛国者としての姿の二つを持っているとされています。
キリスト教徒の視点から社会主義を批判する立場の小説を書いた。
従って、彼の文学者としての活動の全盛期も、ソビエト国内で体制批判をしていた頃だったとされる。
もちろん、彼自身の人間としての軸がぶれているわけではないでしょう。
ただ、社会主義のイデオロギーからは自由だった彼も、キリスト教の宗教的な観念からは自由ではなかったようです。

帰国後はロシアの精神的支柱となったと伝えられますが、
彼の市民権を回復してくれたゴルバチョフも、ロシア連邦最初の大統領のエリツィンにもソルジェニーツィンは容赦なく批判を行っています。
彼の理想的な「ロシア」を実現してくれる指導者ではなかったんでしょうね。
ただ、晩年の彼は意外なことに、プーチン体制を支持しました。

そう言えば
ソビエト崩壊直後の混乱したロシアについて、
何かのインタビューで、正確ではないだろうが、
「自由と平和が保障されるなら、専制国家でも構わない」と発言していたのを、印象的に覚えている。

それなら社会主義国のソビエトは専制主義国家ではなかったのか?と当時悩んだ記憶があったから。
亡命時代には、社会主義体制のソビエトに対する批判者であり、反体制の闘士として西側が賞賛したソルジェニーツィンも、ナショナル・アイデンティティを再生させる権威主義的なプーチンを支持したのも、その辺が根底にあるのかな?と思ったもんです。
もちろん、ソルジェニーツィンの文学がそれによって評価を下げるわけでもないのですが、西側にとって利用価値がなくなったのは間違いないですね。

僕が読んだのは「イワン・デニーソヴィチの一日」で、最初から最後まで、作品の中に地吹雪が吹き荒れているような作品でした。

彼の作品と名声が、ロシアという少々危険な国のナショナリズムの行き過ぎた高揚に利用されない事を願ってます。
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2008年05月23日

真実は墓場まで〜名探偵ホームズDボスコム渓谷の惨劇

ホームズとワトソンは警察ではありません。

探偵が求めるものは事件の裏側にある真実です。
従って、その真実によっては罰を下さないこともあるのです。

そういう事件がホームズ物語には結構あります。
『悪魔の足』とか『チャールズ・オーガスタス・ミルバートン』
『ブルー・カーバンクル(青いガーネット)』
『アベ農園』などです。
これはそんな事件の中の一つであります。

ボスコム沼のほとりでチャールズ・マッカーシーという男が殺害された。
ボスコム谷一の大地主はオーストラリアで金を作って帰ってきたヘンリー・ターナーという男で、チャールズ・マッカーシーはやはりオーストラリア帰りの男で、ターナーの土地の一部を借りて住んでいた。

ホームズがワトソンに事件の説明をする。
「そして事件のほうだ。月曜日の午後3時、マッカーシーは人に会う大切な用事があるから、とボスコム沼に向った。そしてマッカーシーのあとを息子のジェームズが鉄砲を片手に追いかけていったのを目撃されている。そしてボスコム沼でこの二人が激しく言い争っているのを目撃されている。そしてジェームズは父親が死んでいると沼の番人に申し出た。父親は頭を鈍器のようなもので殴られていたが、死体から数歩のところに息子の猟銃がころがってあり、さもその台尻で殴り殺したといわんばかりだった。そして息子はすぐに逮捕されたわけだ」

しかし裁判でのジェームズは殺害は否定するものの、口論の原因を述べる事を固く拒んでいると言う。
ターナーの娘アリスが到着した二人を迎えた。
彼女は、ホームズに父子の言い争いの理由を打ち明け、ジェームズの人柄から彼は絶対に殺人など犯していないと訴える。

「ジェームスは虫一人殺せない優しい男性です。あの人がお父様と口論したのは私と関係のあることなので、検察官に言わなかったのです」

「どう関係があるのですか」

「お父様のマッカーシーさんは私とジェームスの結婚を強く望んでいました。ジェームスはまだ若いのでお父様をよくそのことで口論していたのです」

「あなたのお父様はどうなのですか」

「父も反対でした。賛成なのはマッカーシーさんだけです」

ターナーとマッカーシーは、昔ヴィクトリア州の鉱山で働いていたことをホームズは知る。そして、ターナーはマッカーシーのことをいろいろ援助していた事も知る。

ホームズの凄いのはここからだが、
彼は現場の周りを徹底的に調べ周り、森の中から一つの石を拾う。
そして、これが凶器である事をレストレードに教え、犯人の特徴まで割り出すのだ。

「レストレード君。これが凶器です」

「どうしてわかります」

「石の下の草が生えていましたよ。そこに置いてから2,3日しかならないわけです」

「すると加害者は」

「背の高い左利きの男で、右足がびっこで厚底の靴をはき、灰色の外套を着て、インド産の葉巻のパイプを使っています」

なんで分かるの?

このほかにホームズの興味を惹いた事柄が二つあった。
捕まったジェームズが言った言葉だ。
ジェームズが聞いたのは「クーイ」という呼び声で、普段二人の間で呼び合う合図だったと言う。そして死ぬ間際に言った「ネズミ」がなんとかという言葉だ。
「クーイ」とは豪州人の間で使われる呼び声で、彼はオーストラリアにいた人間と会うつもりだったのだと言う。
そして、「ネズミ(a rat)」とはオーストラリアのバララット(BALLARAT)鉱山の事だったと見抜く。

そんなホームズのところにターナー老人がやってくる。
そして真実を話す。
ターナーはオーストラリアで強盗をしていた。「バララットの黒ジャック」ターナーの仲間がある日襲撃した金塊護送隊の荷馬車の御者がマッカーシーだったのだ。
堅気になってイギリスに戻ったターナーの前に秘密を知るマッカーシーが現れた。その後、ターナーは弱みを握る彼の言いなりになる。

やがて、マッカーシーは自分の息子をターナーの娘と結婚させて財産の乗っ取る事を計画したが、ターナーは断る。
そしてあの日、二人はその問題を話し合うために向かうが、偶然マッカーシーが息子と口論する場を見、娘を罵るのを聞き逆上する。
彼はジェームズが居なくなった隙にマッカーシーを殺す。

真実を知ったホームズはジェームスが死刑の宣告を受けない限り、この告白を口外しないと約束する。

ジェームズは巡回裁判で無罪放免となる。
ターナー老人は告白後、死ぬ。
そしてアリスとジェームスは結婚した。

こんな筋です。

このホームズの措置を考えるかは、あなた次第です。
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2007年09月10日

女より幻想を奪わんとする者にもまた危険あり〜名探偵ホームズC花婿失踪事件

冒頭のセリフは、この物語の最後にホームズが語る「ペルシアの古いことわざにあるじゃないかー虎児をとらえんとする者には危険あり、女より幻想を奪わんとする者にもまた危険あり、ということさ。」というセリフから取りました。

この話、簡単に言えば結婚詐欺事件です。
「いつものように、ベーカー街221bの下宿部屋で、暖炉を囲みながらホームズとワトスンが語り合っていると、大きな毛皮のボアを首に巻き、先端にカールした大きな赤い羽根を付けたつばの広い帽子を「デヴォンシャー公爵夫人」のように斜めに被り着飾った大柄な女性がやってきます。彼女の名前はメアリー・サザランド。彼女は母と継父との3人家族で、タイピストの仕事による収入のほかに、亡くなった伯父から相続した遺産の利子があり、これは両親にそのまま渡しているとの事。
 継父のウィンディバンク氏は、普段からなぜか彼女が外出することを大変嫌がっていました。ある時彼女が継父が止めるのをふりきって舞踏会に出かたところ、そこで「頬ひげと口ひげを生やし、声はささやくようで常に何時も光線よけの色眼鏡かけている」ホズマー・エンジェル氏と出会い、恋に落ちました。
しかし、おかしな事にエンジェルが彼女にくれる手紙は、署名までタイプライターで打たれたもの。おまけに詳しい住所も彼女に教えてくれません。エンジェルはウィンディバンク氏がフランスへ出張に行ってしまった隙に、うるさい継父がいない間に結婚してしまおうと持ちかけます。聖書に手を置かせて「何があっても心変わりしない」と永遠の愛を誓わせ、1週間後の結婚を母親と話し合います。母親も彼を気に入って父親の方は何とかするからと言うのです。ところが、再び父親がイギリスに出張した留守の間に結婚式を挙げるため教会へ向かう途中の馬車の中でエンジェル氏はこつ然と姿を消してしまいます。愛しい婚約者の行方を彼女はホームズに捜してもらいに来たと言うわけです。
ホームズは、彼女に「この問題はボクに任せてあなたはこの男の事を忘れてしまいなさい」と忠告するのです。もちろん、彼女は断ります。いつまでも彼を待つと言って…。
なぜ、ホームズは男のことを諦めろと言ったのか?彼にはホズマー・エンジェルの行方がわかっていたのです。そして彼が割り出したエンジェル氏の正体とは…?


初めに、結婚詐欺だと言った通りで、この話は昔ホームズ物語を読んだ人なら知っている内容か?と思いますが、犯人?は義理の父親のウインジバンク氏です。
ウインジバンク氏とエンジェル氏が一緒にいた事がないと言うところからも、これは「入れ替わり」の古典的なトリックです。
ホームズはエンジェルの送るサインまでタイプ打ちした手紙の活字の特徴と、ウインジバンク氏がホームズに送った返信のタイプとが全く同じ特徴を有しているのを証拠として、ホームズはウインジバンクを呼び出しその「罪」を糾弾します。
法律では罰されない事がわかっているウインジバンクは開き直って「冷たいせせら笑い」を浮かべ、「あなたがりこうな人なら、いま法律を犯しているのはわたしじゃなくて自分だということがわかるくらいの頭はもっているはずだ」と言い放ちます。
これに対するホームズの言葉がこの話の中の唯一爽快な部分。
「確かに法律は君をどうすることもできない。だが君ほど罰を受けるに値する人間はいないよ。もしあの娘さんに男友達がいるならきっと君の背中をムチでどやしつけているぞ。」
そしてホームズがムチを手にするそぶりを見せるとずるい男は脱兎の如く通りを全速力で逃げていくのです。名探偵は犯人を方の元に罰することも、無知だが純情でかわいそうな娘を救うこともできなかった。
「冷酷な悪党」ウインジバンクは、なんと妻(メアリーの母親)とグルになって娘をだまし、結婚させないようにして収入が減るのを防ごうとしたのです。
まったくひどい大人ですな。本人はともかく、母親の態度も信じられない。ホームズの言うとおりに「あいつはだんだん悪事を重ねて、やがてはとんでもない犯罪を犯し、絞首台でけりをつける事になるだろう」となったかどうか?人間は欲のために何でもやってしまう。
案外こういう男がぬくぬくと天寿を全うするのが実際の世の中です。少し救いのない、読後の爽快感のない物語です。

もっとも、ホームズは彼女の話を聞きながら真実を知ってしまった。だからこそ、彼女にエンジェル氏を忘れろと言ったわけです。
女嫌いとも言われるホームズの紳士ぶりがこんなところに表れています。

もう少しスッキリしてくれるといいんだけど、しょうがないね。

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2007年08月08日

ちょうどパイプ3服分の問題だ〜名探偵ホームズB「赤毛連盟」




コナン・ドイルの手による…もしくはJ・ワトソンの筆によるシャーロック・ホームズの事件簿は「冒険」「思い出」「帰還」「最後の挨拶」「事件簿」の5冊。長編は別として、やはり「ボヘミアの醜聞」「赤毛連盟」「まだらの紐」「青いガーネット」が入った「冒険」シリーズが著者も力が入っていていいようです。
前回、「ボヘミアの醜聞(The Scandal in Bohemia)」を掲載したので、次は年代記的にはホームズが手がけた一番古い事件である「グロリア・スコット号事件」か「冒険」シリーズで「ボヘミア…」の次に書かれた「赤毛連盟(Red-Headed League )」のどちらを載せるか考えましたが、やはりホームズものを卒業した方々もご存知の「赤毛連盟」について書いてみたいと思います。

この物語も僕は小学校の頃「山中本」で読んだのが最初でした。

1890年のある日、ホームズの住むベイカー街221Bにジェイベズ・ウィルソンというユダヤ人の質屋がやってくる。彼は燃えるような赤い髪の毛をしているのが印象的だが、この赤毛が事件の鍵となるのである…。

ある日、ウイルソンの経営する質屋に、新入りのバイト員としてヴィンセント・スポールディングが応募してくる。彼は見習い中とて給料は半分でいいという珍しい若者だ。
そのスポールディングからある日、ウイルソンは簡単な作業で高額な収入を得ることができるというひどくうまい儲け話を聞かされる。
これは立派な赤毛の人間のみで構成された「赤毛連盟」という組織によるものらしく、今回、その赤毛連盟に欠員が出たのだと言う。
スポールディングに連れられて面接会場に着くと、そこはありとあらゆる赤毛の人間の集まりとなっていた。しかし、スポールディングのおかげで他の応募者を出し抜いて面接にこぎつけたウイルソンは、面接官のダンカン・ロスというやはり赤毛の男に認められ、首尾よく赤毛連盟の会員になった。仕事の内容というのは指定されたオフィスで百科事典を10時から2時の4時間書き写すだけというもの。ウイルソンは喜んでこの週4ポンドの「仕事」を引き受ける。しかし、8週間後その赤毛連盟は数週間後に突如「解散」してしまう。ウィルソンはそれを不審に思い、また折角つかんだ割りのいい稼ぎをフイにする事ができなかったので、この謎の仕事と赤毛連盟の真相についてホームズに調査を依頼したいと尋ねて来たのだ。ホームズはそれを面白く思い喜んで仕事を引き受けた。しかし、その影には大きな犯罪計画が隠されていた…。

知ってる人も多いでしょうから、先に進めるが、要するに、質屋の裏側にはロンドンでも指折りの金融機関「シティ・アンド・サバーブ銀行」があったのだ。ホームズは実際にウイルソンの留守中、質屋を訪ねてスポールディングに会い彼のズボンの膝を観察、さらに店の前の地面をステッキで叩くことで、質屋から銀行まで地下トンネルを掘って進入し強盗を働くという恐るべき計画を察知したのだ。赤毛連盟の解散は犯罪の準備ができたことに他ならない。スポールディングの本名はジョン・クレー、貴族の血を引く犯罪者だ。

ホームズとワトソン、ジョーンズ警部に銀行頭取のメリウェザー氏。ランタンの明かりを消した真の闇の中、彼らが待ち伏せていると、銀行の大金庫の床下の敷石を外して犯人が現われた…。

そういうわけで、ホームズはワトソンとジョーンズ警部の強力を得て、知能犯「ジョン・クレー」を逮捕することができた。
推理においても、活劇としてみても面白い作品だ。




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2007年07月15日

「The Woman! Watson!」 〜名探偵ホームズA「ボヘミアの醜聞」




ご存知の通りかどうか知りませんが、
コナン・ドイルの「ホームズもの」の単行本
最初の長編「Study in scarlet」(緋色の研究、もしくは習作)
で世に登場したホームズとワトソン。
その後、ストランド・マガジンに連載されたホームズ物語の最初の一編(「シャーロック・ホームズの冒険」に収録)が「ボヘミアの醜聞」(A Scandal in Bohemia)でした。
前にも書きましたが、ボクが最初に読んだホームズ物は、
「バスカビル家の犬」で、この「ボヘミアの醜聞」を最初に読んだとすれば、ボクはシャーロキアンにはならなかったと思いますネ。

そして、申し訳ないが、多くの人が、「ホームズもの」と言って、思い浮かべる作品は、この作品ではなく、「赤毛連盟」・「まだらのひも」・「青い紅玉(ガーネット)」といったものではないか?と思われます。

しかし、この「ボヘミアの醜聞」には、ホームズにとって一番重要な人が登場します。
「The Woman(あの女性)」とホームズが呼んだオペラ歌手アイリーン・アドラーであります。

この人こそは、ホームズ物語全編の中で、自信家のホームズを出し抜いたただ一人の女性です。

簡単にストーリーを書くと(知ってる人ゴメンナサイ)

結婚後(多分「四つの署名」の後結婚したメアリ夫人だと思う)ワトソンは久し振りにベーカーストリート221bのホームズのもとを訪れまると、2人の前に突然派手な格好にマスクをした貴族が訪れる。最初は本名を名乗らなかった男も、ホームズの推理によりボヘミア国王である事を明かし助力を請う。

彼の依頼内容は、3日後にスカンジナヴィア王女と自分との婚約が発表される予定なのだが、彼の昔の恋人であるアイリーンが、婚約相手に昔2人で撮った写真と手紙を送りつけると言って彼を脅迫してきたので、それらを取り返して欲しいというものだった。

依頼を受けたホームズは、早速馬丁に変装して、翌日からアイリーンの身辺調査にあたったが、偶然アイリーンとその婚約者であるノートンという弁護士の結婚式の立会人をする事になる。結婚して海外に旅行に出てしまっては、写真が取り戻せなくなると考えたホームズ、計略を巡らした。まず牧師に変装して、アイリーンの自宅前で揉め事に巻き込まれて大怪我をしたふりをし、首尾よく彼女の家へ入る事に成功した。そして前もって配備していた仲間とともに、ワトソンが「火事だ!」と叫ぶと、アイリーンが向かった先は…写真の隠し場所だったのだ!

首尾よく計画が成功し221bの自宅にご機嫌で帰ってくる2人。ホームズがドアを開けるためにポケットの鍵を探っていると、あるすらりとした紳士が、すれ違いざまに「おやすみなさい。シャーロック・ホームズさん」と言った。その時はその男が誰だかわからなかったのだが…。

翌日の朝、王を含めた3人がアイリーン宅へ乗り込むが、すでに危険に気付いたアイリーンはノートン氏と旅立った後だった。目的の写真の代わり、自分が写った一枚の写真と、ホームズ宛の手紙を残して…。前夜ホームズに挨拶した青年はアイリーンの変装だったのだ。写真の奪回には失敗したものの、身の安全が保たれて満足したボヘミア王がホームズに指輪を進呈しようとするが彼は拒否し、かわりに残されたアイリーンの写真をもらいました。

それから、ホームズが彼女の事を話すとき、名前ではなく、「The Woman(あの女性)」と呼ぶのだった…。

このように、これはホームズの失敗談です。
成功してないから、あまりパッとしない物語になっています。
この失敗談をあえて最初に持ってきたドイルの意図はいまいち理解できませんが、下宿の管理人がハドソン夫人じゃなくてターナー夫人だという謎や、ホームズが多くの手下?を使って事件を演出するところなんかはむしろ怪盗ルパンみたいで面白いです。
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2007年06月10日

名探偵ホームズ〜実はボクはシャーロキアン




子供の頃、本が好きだった人のなかで、
およそ、この名前を知らない人はいないだろう。

「シャーロック・ホームズ」

ベーカー街221Bに住むこの稀代の名探偵は世界中にシャーロキアンというファンを持っています。
彼の活躍したロンドンはビクトリア朝の繁栄の中、貧富の差も激しく、犯罪は絶えなかったようです。
あの「切り裂きジャック」がロンドン中を震撼させたのもこの時期です。

さて、約60篇あるホームズ物語の中で、あなたはどの物語が一番印象に残ってますか?と、言うか、どの物語から「ホームズの世界」に入りましたか?

ボクは、小学生の時読んだ「バスカビル家の犬」が最初です。
その次は、意外かも知れませんが、「怪盗ルパン(リュパンともいう)」を書いたルブランによる「ルパン対ホームズ」でした。
ホームズを連想させる探偵は彼の「奇岩城」にも登場し、ルブランがドイルによるホームズを意識していたようですね。
もともと、ボクは、ホームズよりもルパンの方が好きでしたから。

しかし、「バスカビル…」からホームズに入門したのは、ボクにとって良かったかも知れません。この物語は、ドイルの手によるホームズものの他の長編「緋色の研究(シャーロキアン田中喜好さんの見解では研究ではなく習作との事です。)」や「4つの署名」「恐怖の谷」に比べても、ミステリーとして一番バランスがいい物語だと思っています。
ボクの言っている意味がわかりづらかったら、3篇を読み比べてください。

もし、ボクが「緋色の…」から入ったら、現在のようなホームズファンであったかは疑問です。

「バスカビル家の犬」を読んだ小学生のボクは、夢中になりました。
そして図書館においてある「ホームズ物」を読みまくったのです。
※実は、それこそは、現在シャーロキアンではカルトな人気を持つ「山中本(作家山中峯太郎氏による大幅な意訳がなされたもの)」だったのですが。
とにかく、ボクは「唇のねじれた男」「まだらの紐」「赤毛連盟」「青いガーネット」「海軍条約文書事件」と読みすすめ、ホームズにのめりこみ、一度はこの世界から離れていたものの、その後、再び新潮文庫の活字の小さい文庫本で読み直し、大學のときに全作読破。

おきまりのコースで解説本や研究書に手を広げ、知識を深め、
読み直すたびに新鮮な発見があるこの物語に夢中になりました。
ホームズのイメージもずいぶんと変わりました。
しかし、ボクにとって、漱石の「猫…」と同じくらい親しみやすいものであるのは間違いありません。

みなさんのホームズ体験はいつですか?
これからも少しずつホームズを語りたいと思っています。
諸先輩には遠く及ばないのですが(苦)
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2007年05月12日

海底二万里(ヴェルヌ)




ネモ艇長を知ってますか?
ノーチラス号って知ってますか?
最近だとディズニー・シーのミステリアスアイランドの入り江に浮かんだノーチラス号を見る事ができます。
もちろん模型ですけどね。
航行中の船の胴体に穴をあけ沈没させる事件が起き、
それを調査するために軍艦に乗り込んだ海洋静物学者のアロナックス博士、助手のコンセイユ、銛打ち(つまり鯨取り)ネッドが、乗っていた船を沈没させられ、ふとしたことからこのノーチラス号の存在を知り、ネモ艇長と出会います。
そして、海を舞台にした大冒険が始まるという筋だったと思います。

ヴェルヌはものすごい想像力に溢れた作家です。
なんたって、この物語が書かれた当時、潜水艦は無かったのだから。
ネモは不思議な男です。
小学生の時に読んだこの本で、一番印象に残っているのは、
北極点やアトランティスの遺跡を探検することと、
ナガスクジラは取ってはだけだが、マッコウクジラは殺してもいいという場面かな?(確か本当にあったと思うんだけど)

最近だと、先に上げたTDS(ディズニー・シー)の他、
「ふしぎの海のナディア」で有名でしょうかね?
感性がカサカサになったときには読むといい本でしょう。
だから、読んだほうがいいな…オレ
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2007年05月05日

チャペック「長い長いおまわりさんの話」「郵便屋さんの話」




チャペックと言えば「ロボット」ですが、
ボクが最初に読んだのは「郵便屋さんの話」と「長い長いおまわりさん話」です。
「郵便屋さんの話」は配達の仕事が嫌になった郵便局員のコルドバさんが、郵便局の妖精にであい、仕事が好きになるという話と、局に届いた差出人宛先人なしの手紙をこの妖精の力を借りて中身を読んでもらい、相手に届ける旅に出る話の大きな二つの流れだったと思うんだけど。個人的には妖精たちの食事が切手のノリだったり、電信テープでマカロニ?を作って食べるとか言うのが面白かったね。あと、封書でトランプをする話ね。
「長い長いおまわりさんの話」はパトロールから帰ってくるおまわりさんたちが煙草をふかしながら話す、自分達が見聞きしたよもやま話です。巡査のボコウン君が12の首のある竜からお姫様を救う話がメインだったと思うんだけど、このおまわりさんが面白い。公園のネコのケンカを仲裁し、子鬼の家を占拠したリスを法律に基づいて説得したり、巣から落ちたスズメの子を救うために消防署の応援を頼むとか…これらの世界は、つまり動物と人間と妖精などが普通に生活空間を平等に共有している世界なんですね。そこがいいのかなあ。
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2007年04月29日

ドリトル先生アフリカ行き(ロフティング)




ボクは昔、自宅でセキセイインコを飼っていました。
「ピーコ」ちゃんという月並みな名前のインコです。
頭がいい子で、ピーチクパーチク啼く間に、思い出したように言葉をしゃべりました。
「ピコチャン、ピコチャン、○×○×(意味不明)チャップイ・チャップイ…」
かと思うと、口調を変えて「ブツブツブツ…」と低いしゃがれた声で啼くのです。前者は祖母が暇にまかせて教え込んだ言葉で、後者は父の酔って話す言葉を聞きマネしたものと思われます。

子供の時は、四十雀を飼っていました。これはいい声で良く啼くけどオウムやインコのようには話してくれませんでした。
おっと、鳥の話じゃないね。

子供の頃、動物と話ができたらいいな、と思ったことがあると思います。人間は今や、コンピュータを用いて、古代ぼ文書まで解読する技術を持っていますが、動物や植物の意思を解読することはできていません。(実は、植物と話せますと自称する方はいらっしゃいますが、この際それは無視します。また、自分のペットと話せると豪語する飼い主の方々もご遠慮いただきます。)

この世界でただひとり、動物とコミュニケーションがとれる人間、それこそ、パドルビーの住人、ドクター・ドリトルその人であります。そして彼が動物語を習った講師がアフリカから来たオウムのポリネシア(推定100歳以上)なんですね。
流行らない医者だったドリトル先生に、ポリネシアはあらゆる動物の言葉を教えます。そして、獣医となったドリトル先生は瞬く間に全世界の動物たちの間で有名な人となるわけです。世間的にはただの変人ですけど。彼の回りには様々な動物たちが集まります。オウムのポリネシアはもちろん、サルのチーチー、しっかり者のアヒルのダブダブ、愛すべきブタのガブガブ、犬のジップ、頭のいいフクロウのトートーなどなど…。

そんなある日、遠くアフリカの森の奥地でサルたちが病に冒されているので来て欲しいという便りを受けたドリトル先生は決意します。
「アフリカに行こう」と。
拙い説明で申し訳ない。その後もいろんな冒険の末にドリトル一行は海を渡り、アフリカに到着するわけですが…その先の冒険話は是非とも読んでいただきたい。
今でも、岩波の少年少女文庫に載っていますよ。
ドリトル先生ものはこの「アフリカ行き」がやはり一番面白いです。
その他にも「航海記」「郵便局」「動物園」「サーカス」「キャバン」など全部で12巻が出ています。
ボクは講談社のもので「アフリカ行き」を、「キャラバン」を岩波で読みました。(「キャラバン」はカナリアのサーカスで旅をする話です−確か)

訳者はあの井伏鱒二先生。
非常に読みやすい文章です。

後日、このドリトル先生はアニメになり、映画にもなりました。
つまらなかったというのが印象です。
特に映画は原作とかぶる部分がほとんどないオリジナルでした。
正直な話、本の中に広がる想像溢れる世界の一端しか表現できてはいないと思います。

図書館の子供向けコーナー(越谷だったらヤングアダルトコーナー)にありますので、購入するのが恥ずかしかったら、ぜひ借りて読んでみてください。
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posted by とたけけ at 20:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 海外 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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