2009年06月26日

江戸に遊ぶ10(坂岡真『うぽっぽ同心十手綴り〜凍て雲』)


凍て雲―うぽっぽ同心十手綴り (徳間文庫)

凍て雲―うぽっぽ同心十手綴り (徳間文庫)

  • 作者: 坂岡 真
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2006/11
  • メディア: 文庫




作者は僕と同年代。

「うぽっぽ」とは暢気なうっかりものの意味だそうで。
ま、よくある「昼行灯」みたいな感じでしょうかね?
臨時廻り同心長尾勘兵衛は袖の下(ワイロ)を受け取らない、
手柄は他の仲間に譲っても平然としている。
同僚にも悪者にも小馬鹿にされる男だが、実は裏で南町奉行根岸肥前守から一目置かれる切れ者で、
時には法を破ってでも、正義を貫く硬骨漢でもある。

例え相手が、位が上の与力であっても、松江藩十八万六千石の大名であっても、火盗改であっても、関係ない。

個々のエピソードは、どれも味わい深いが、
この作品集の中では「つわぶきの里」が興味深い。
簡単に言うと、ある朝、自身番にみかん箱を抱えた男が現れる。
中には乳飲み子が眠っているところから物語が始まるのだが、
彼は元侍で、7年前にひょんな事から、女を巡る決闘に巻き込まれ、片方の侍の片腕を斬ってしまった。
彼に斬られた侍は、意識不明となってしまい、一方でその相手は逃げてしまたっため、申し開きのできなかった彼は、妻と娘を残して八丈島に島送りになってしまう。
その後赦免になり江戸に帰って来た男は過去を捨て、紙漉き職人として暮らし始める。
彼が斬った男は片腕となって侍をやめ、女とともに農民になり、
その決闘から逃げた男は、浪人となり土器を売って生計を立てていると言った具合。

人の幸せとは何だろう?と思わされる物語です。

この物語のラストは「どこかで見たような」風景で終わります。


ところで、この話の中でひっかかる表現がひとつ。
紙漉き職人となった平助こと坂崎平内と勘兵衛が、坂崎の妻子の待つ公事宿に向かう場面です。

「勘兵衛にも緊張が伝染り、うっかりすると右手と右足が同時にまえに出てしまいそうになった。」という一文。

たぶん、江戸時代の歩き方ってナンバといって手と足が一緒にでる歩き方だったような気がするんだけど。

ま、いーか。
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2009年06月17日

江戸に遊ぶ9(新宮正春『陰の絵図』)


陰の絵図〈上〉

陰の絵図〈上〉

  • 作者: 新宮 正春
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 1990/03
  • メディア: 単行本




陰の絵図〈下〉

陰の絵図〈下〉

  • 作者: 新宮 正春
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 1990/03
  • メディア: 単行本




新宮正春さんと言うと、元巨人番の記者の方で、作品でもスポーツ関係の方が有名だったと思ってた。
でも調べてみたら、時代小説もたくさん書いてるんですね。
この物語は、徳川家康の重臣で、天領の総代官や佐渡金山などの奉行として徳川幕府の財政基礎構築に多大な功績を残しながら、死後不正蓄財のかどで遺児7人が処刑され、他にも多くの大名旗本が連座する大事件に発展した大久保石見守長安の残したと思われる遺金をめぐり、繰り広げられるスケールの大きな物語です…と言うのが大体の筋。

時は三代将軍家光の代、日光東照宮の造営のための経費、島原の乱の戦費等で幕府の財政は逼迫していた。
そこで、浮かび上がったのが長安がどこかに隠したと思われる五百万両とも言われる遺金だった。
その場所は、彼が子孫に残した青龍、朱雀、白虎、玄武の四振りの銘刀のなかごに刻まれた文字に隠されていると言う。

いち早く、それに気付いたのが「知恵伊豆」とも言われた松平伊豆守信綱、家光の側近で幕府の回国者(隠密)を動かす中根壱岐守正盛、その甥にあたり、今は姿をくらました元伊賀組同心頭の服部小半蔵と言った面々、それに、同じく遺金に気付いた、北条早雲の血筋を引く頭領、奇平次に率いられた風の党という忍びの軍団や、長安の遺児藤次郎、さらには紀州大納言頼宣の落とし胤の龍之助や彼を守りながら幕府に謀反を考える軍学者由比正雪や、龍之助を守る役目である元紀州の鯨撮りだった風伝の源太が関わる。
さらに、長安の一族に恨みを持つ忍びであるましらの仙蔵などが絡んで話の背景にある怨念や人間関係がどんどん入り組んでくる。

最後には春日の局や現将軍家光にかかる天下を揺るがす秘密だとか…。

話はどんどん大きくなってくる。

暗号解読の楽しみ、黄金捜しという冒険活劇、奇平次の娘である18才の鈴音と源太の淡い恋愛感情。仙蔵と源太との死闘の行方…

ここで、全てを説明するのは不可能ですね。

そうそう、タイトルにある「影の絵図」は最後の最後にわかりますよ。

一言で言ってしまえば、
人間の欲望のむなしさ。
これが感想かな。
posted by とたけけ at 10:24| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 作家さ〜 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月10日

江戸に遊ぶ8(佐伯泰英『死闘!』)


死闘!―古着屋総兵衛影始末〈1〉 (徳間文庫)

死闘!―古着屋総兵衛影始末〈1〉 (徳間文庫)

  • 作者: 佐伯 泰英
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2008/01/05
  • メディア: 文庫





日本橋富沢町に大店を構える古着問屋、大黒屋総兵衛は全国の古着商いを一手に引き受ける富沢町惣代の顔とともに、かつて初代が「神君」徳川家康と交わした約束により、代々隠れ旗本として幕府のために裏の仕事を務める密命を受けて、代々その任務を果たしてきた。

家康の死から85年が過ぎた元禄14年。
現6代目総兵衛が惣代を務める富沢町の古着市にぎわう中、
大黒屋の担ぎ商いの女、そめが無残な死体となって発見されたところから物語は始まる。
そめに続き、同じ富沢町の古着商の駿河屋繁三郎が喉首を斬られた惨殺体で源森川の岸辺で発見された。

何者か大黒屋の存在を快く思わない闇の勢力が大黒屋〜鳶沢一族に襲い掛かってきたのだ。

北町奉行保田宗易、筆頭与力犬沼勘解由、同心遠野鉄五郎、駒込殿中お歌の方、そして大黒屋の権益を狙う江川屋彦左衛門、さらにその後ろには、「御前」と呼ばれる、五代将軍綱吉の下で強大な権力を持つに至った側用人柳沢吉保の影が…

家康から拝領した愛刀三池典太を手に、総兵衛の祖伝夢想流の太刀が血しぶきをあげる…。


江戸の都市づくりが始まったばかりの頃、
全国から集まった浪人や野武士による無法を取り締まるべく、
そうした無頼の男鳶沢某に命じ悪人退治の任務を与えた。
見事にその任務を果たした鳶沢は、家康の許しを得て、
その名を冠した鳶沢町を造り古着商いの権利を与えた。
鳶沢町はその後富沢町と名を変え、古着商いの大市場として大層繁盛したらしい。

このことから佐伯さんが筆を起こしたのが、この「死闘!〜古着屋総兵衛影始末」という書き下ろし小説なんだそうな。

作家の想像力は、江戸の町に表は古着屋、裏は秘密基地を擁した、鳶沢一族のアジトを作り出す。
初代将軍家康の命により代々江戸の治安を影から支えた鳶沢一族と、現将軍綱吉の威光でのし上がった今の権力者柳沢〜松平美濃守吉保との暗闘は、ありそうな話で面白い。

観てきたようなウソをつき…。
時代小説の作者は、人一倍自由な想像力がないと勤まらないなと感じる一冊。
「死闘!」はこのシリーズの最初の一編でこの後も続き第11作「帰還!」まで出たそうな。

言うまでもなく、
佐伯さんはこの他にもドラマにもなっている「居眠り磐音 江戸双紙」や、「吉原裏同心」「夏目影二郎始末旅」など、物凄く多くの作品を書いている人気作家でいらっしゃるわけだが、時代小説に転身する前は全く売れず、30代から作家として闘牛小説や冒険小説を書き始めて、ヒットしたのは57才になってからとウィキで知った時には、「継続は力なり」と言うか、人生いろいろというか…。

現在は西村京太郎先生なみに作品数の多い人気作家になっています。
文庫書き下ろし時代小説だけ書いているそうで、読む方が追いつかないくらい早く作品を書き上げる力は感心するばかり。

いや〜、時代小説って、ホント面白いですね!
posted by とたけけ at 11:05| 東京 🌁| Comment(0) | TrackBack(1) | 作家さ〜 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月20日

江戸に遊ぶ7(鈴木英治『稲妻の剣』)


稲妻の剣 (ハルキ文庫 時代小説文庫)

稲妻の剣 (ハルキ文庫 時代小説文庫)

  • 作者: 鈴木 英治
  • 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
  • 発売日: 2005/06
  • メディア: 文庫




徒目付、久岡勘兵衛が活躍するシリーズ。
書院番という役職の同僚である上田半左衛門と武藤源太郎は長年憎しみ合っていたが、ついにつまらない事が原因で、半左衛門は源太郎を切り殺してしまう。

そのまま逃亡した半左衛門を勘兵衛はなんとか捕らえたが、殺した理由に納得がいかない。
半左衛門の家族は、主人の遺体を引き取ると、墓の前で全員が自殺して果てる。侍のむなしさを感じる勘兵衛。

その頃、江戸に帰ってきた元部屋住の旗本、梶之助は人斬りを重ねる。
なぜ、彼は山崎伝八郎一家、続けて石橋忠兵衛一家と子供に至るまで皆殺しにする。
なぜ、彼は人を斬るのか?何が彼をそこまで追い詰めたのか?

また、些細な事から家を飛び出した、勘兵衛と修馬の友人である左源太はやけになってヤクザの用心棒に身を落としていた…。

簡単に説明できないが、
物語は最後に勘兵衛と梶之助の闘いでクライマックスを迎える。

鈴木英治さんはボクと同い年で期待の新人作家と呼ばれています。
既に多くのシリーズものを発表しており、先々楽しみな作家です。
posted by とたけけ at 01:34| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(1) | 作家さ〜 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月13日

江戸に遊ぶ5(佐藤雅美『江戸からの恋飛脚〜八州廻り桑山十兵衛』)


佐藤雅美さんは、平成6年第110回直木賞を受賞した文句なしの大衆小説家でいらっしゃる。
1941年生まれと言うから、68歳かぁ。
代表作は新田次郎賞を受賞した「大君の通貨」と直木賞受賞作「恵比寿屋喜兵衛手控え」なんでしょうが、ボクが読んだのは表題作。
八州廻り桑山十兵衛シリーズのひとつで、関東取締出役八州廻りと言う、関東一帯の警察官みたいな役割の桑山十兵衛を主人公にした一連の作品である。

今回の「恋飛脚」は、男やもめだった十兵衛の新しい恋物語に、会津若松松平家と水戸徳川家の間の問題などが絡むもの。

この十兵衛、一見あまりカッコよくない。
でも腕はたつらしい事が後半になってわかってくる。
今回は、熱海で詐欺に逢い、その犯人でもある上総の旧家の出戻り娘・登勢に惚れてしまう。
彼女に逢いたいために、御用を切り上げようとしたり、
登勢に見合い話があったと聞けば、年甲斐もなく拗ねる。
でも、それより大変なのは、この「八州廻り」という仕事だ。
粕壁、小山、今市、熱海、厚木、銚子、茂原…(順不同ですが)
お役目とは言え、関東一円を歩き回る十兵衛一行。
「隠すより現る」では岩槻から越谷に行き、また岩槻に戻り幸手に向かう。そしてまた岩槻へ…といった描写がある。
書くのは簡単だが、歩いて移動した事を考えると大変だね。
ボクならできん。
そして、興味深いのは、この物語中での事件の扱いが結構いい加減な事。
賭場をめぐる小競り合いから、刃傷沙汰が起き、死人が出た。
しかし、刀疵のある死体を検視に出すと事件が江戸の勘定送りになり、村役人やら直接関係ない人間たちまで金がかかる。
だから関係者同士で話をつけ、目をつぶって埋葬してしまおうという事なのだが、冗談じゃないよね。

まあ、いい加減だったという事なんでしょう。

そう言えば、この本、ドラマにもなています。
主演は北大路欣也、彼とともに旅をする粂蔵は寺島進だと。
八話で終わってるから打ち切りかしら?
posted by とたけけ at 23:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 作家さ〜 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月06日

小僧の神様




志賀直哉の本を読んだのは大學生になってから、
「暗夜行路」だったかしらん?
確か、当時は長編中心に乱読していたので、
志賀直哉なら最初からこれと決めていたんですよね。

でも、最初に読んだのは国語の教科書に載った「城の崎にて」だったなあ。
たしかに文章は簡潔で、たいした事も書いていないのに、表現が「立って」いるから面白い。
この「面白い」というのをどう表現していかわからないんだなあ。
あえて言えば、バランスかなあ。
ともすれば表現過多になりがちな自分にとって、
志賀直哉の表現の削り方は真似できない。
posted by とたけけ at 10:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 作家さ〜 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年04月21日

島田荘司によるホームズもの




友人連中にはカミングアウトしてなかったが、
ボクは日本シャーロックホームズクラブの会員でR。
(嵐山光三郎風に)
それも最近は幽霊会員なのでR。
そんな自分は一応「ホームズ」に関わる本は読みたくなるのでR。
(少ししつこいか)
まあ、全世界のシャーロッキアン以外は実在の人物とは信じていないシャーロック・ホームズ(以後SH)の書かれざる事件を扱う作家はとても多く、パロディ・パステッシュと呼ばれるそれらの中にはなかなか読み応えのあるものも多いのです。

一番有名なのはルブランによる「ルパン対ホームズ」でしょうか?南洋一郎さんの訳による子供向けの本で読みましたよ。

日本人の手によホームズものって少ない気もしたのですが、
島田荘司さんによって書かれたこの作品は面白かった。

ホームズのみならず、これにボクの大好きな巨匠夏目漱石先生を絡めて二つの視点から、それも文体を変えて、一つの怪事件を解決してゆく過程を書いているのです。

ワトスン博士の文章なんか「いかにも」といったそれらしい筆の運びで、読みながらドイルの原作(シャーロッキアンは一般に正典=キャノンと呼ぶのですが)と思っていまうくらい似ていました。

それにしても、確かにSHはコカイン中毒ですが、漱石先生の手記に出てくる序盤においてSHはほとんどキ○ガイとして扱われます。

もっとも、漱石先生も神経を病んで帰国するわけなんで、お互い様とも言えましょうか…。

久し振りにシャーロッキアンの血が騒いでしまいました(笑)
posted by とたけけ at 02:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 作家さ〜 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月11日

柴田翔「されど我らが日々」他




柴田翔の小説は「されどわれらが日々」と「立ち尽くす明日」、「鳥の影」を読みました。
当時芥川賞の作家を続けて読もうと意識的にね。
石原慎太郎とか、開高健、大江健三郎とか…
柴田翔と言う作家ははそのなかの1人。
上記の作家たちの中でも、特に柴田翔は文章の明晰さが好きでしたが、いま考えれば、
これは彼がドイツ文学者だった事に関係するのかなあって思います。

少し内容や文書が硬すぎる気もしたけどね。

その硬さや内容の青臭さみたいなところが大学2年の僕にはとてもよかったのです。

あとは、ネーミングですよね。
「されど、われらが日々」
「われら、戦友たち」
「立ち尽くす明日」
なんか、内容そそられますよね。
だから、反対に題名で手が伸びなかったのが庄司薫さん
「赤頭巾ちゃんご用心」
「白鳥の歌なんか聞こえない」
いまだったらよろこんで読むんだろうなあ。
posted by とたけけ at 23:24| Comment(0) | TrackBack(1) | 作家さ〜 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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