2008年05月21日

源氏物語D(夕顔)その2

さて、ようやく「夕顔」の段、本題です。

「六条わたりの御忍び歩きのころ、内裏よりまかでたまふ中宿に、大弐の乳母のいたくわづらひて尼になりにける、とぶらはむとて、五条なる家尋ねておはしたり」

光源氏が六条御息所のところに通う途中、
丁度大弍の乳母がひどく病んで尼になっていたのを、それを見舞おうとして、五条にある家を尋ねていきました。

大弍の乳母は、源氏の乳母の一人で惟光の母親です。

大弍とは従四位下の官僚で、大弍の乳母はその人の妻です。

隣家の板垣に白い花が咲いている。

「あれは何と言う花か?」と尋ねると、
「あの白く咲いている花を、夕顔と申します。花の名は人並のようでいて、このような賤しい垣根に咲くのでございます」と言う。

※原文では「遠方人に物申す」と源氏は言うわけですが、
どうして「何と言う花か?」という意味になるのか?
出典によると、古今集に「うち渡す遠方人に物申す我そのそこに白く咲けるは何の花ぞも」という歌があるそうで、
そこから「この白い花は何の花か?」となるのです。

すると、その隣家の女性は白い扇に花を乗せて持たせる。
もちろん、惟光が取り次ぐのだ。
昔の事、直接そんなやり取りはできないのです。

まどろっこしいですな。

さて、大弍の乳母は源氏の来訪を喜んだが、すっかり気弱になってしまって、心細いのかさめざめと泣くのです。
すると源氏は、自分が幼い頃、母親に死なれてからは、養育する人はいたけど、親しく甘えられる人は、他にいなかったよとシミジミ語ったそうな。帰ろうとして、惟光から先程の扇を受け取ると、
「当て推量に貴方さま(源氏)でしょうかと思っています 白露の光を加えて美しい夕顔の花(のような人)は」

源氏はたちまち心惹かれる。

「この西の家には誰が住んでいるのか?」と惟光に聞くが
ここ5・6日この家に居たが看病で忙しかったのでわからなかったという。当たり前だ。
しばらくして調べた惟光によると、曰くありげな若い女主人がいるという。

かつて「雨夜の品定め」で言う中の品(中流)の女である。
源氏はますます心惹かれるのです。
待ちきれなくなった源氏は覆面で顔を隠し、身なりも変えると、
お忍びで女の家を訪ねた。
すると、女(夕顔の君)はそんな源氏を受け入れる。

女の感じは、驚くほどに従順でおっとりとしていて、物事に思慮深く慎重な方面は少なく、一途に子供っぽいようでありながら、男女の仲を知らないでもない。たいして高い身分ではあるまいと思うが、どこにひどくこうまで心惹かれるのだろうか、もう源氏は止まらない。

彼はやがてこの家に通うようになる。病気だね。ここまで来たら
当然、六条御息所のところに通う回数は減る。

8月15日の夜のことです。
この日もまた女のところに通う源氏だが、
ここは庶民の住むところ、近所の家で人々の会話まで聞こえる。
これでは落ち着かないと、彼は女を連れ出す。
連れ込んだ先、源氏の別荘である河原院は訪れる人も少なく、荒れていて気味の悪いところでした。
女は不安がります。
ここで初めて源氏は覆面を取り正体を明かします。
(それまで顔を見せずに付き合ってたんだね。オドロキです。)
「夕露に紐とく花は玉鉾のたよりに見えし縁にこそありけれ 露の光やいかに」

「夕べの露を待って花開いて顔をお見せするのは 道で出逢った縁からなのですよ 露の光はどうですか」と言う意味だそうです。

すると、この女性、たいしたものである。源氏の姿を見ても、

「光ありと見し夕顔のうは露は たそかれ時のそら目なりけり」
(「光輝いていると見ました夕顔の上露はたそがれ時の見間違いでした」)
と言いかえす。

ますます、不思議な気がして心惹かれる源氏です。
ここでもお互いを名乗りあうわけでもありません。

そんな二人の逢瀬です。

ところが、夜半になって少し寝入った頃
風が強くなり戸がガタガタと鳴り出すようになりました。

ふと光源氏が気が付くと、隣りに横になっている女(夕顔)の枕元に女が現れ、『私という女が居ますのに、こんなところまで来て…』と言う。
はっとして起き上がった源氏が夕顔を見ると返事もなくヘナヘナとしている。これはまずい。

明かりが消えて真の闇です。

「私がいるから大丈夫」と言って刀を抜いて魔よけとするが、
結局夕顔はその物の怪のため、息を引き取ってしまいます。

悲しみにくれたまま源氏は惟光を呼びます。

わけを知った惟光は「お任せください」といい、
女の亡骸を清水の尼寺に人知れず運びます。
それも秘密のためむしろに包んで運ぶのです。
そのむしろから長い髪の毛がこぼれているのが悲しみを誘う。
帝の子どもで殿上人もある光源氏が、死んだ女と関わりがある事が知れてはまずい。

一旦は二条院の自宅に帰ったものの、落ち着かない源氏、闇にまぎれて馬を走らせて女の眠る寺に向かったのだが、惟光は帰れと追い返す。

泣く泣く帰るが何度も馬から落ちそうになり、ようやくのことで二条の自宅に帰る。

こうして、源氏のひと夏の恋は思いがけない形で終わってしまう。

その悲しみのせいでもないだろうが、源氏は「おこり」を病んで長く床についてしまった。
「おこり」とは今でいうマラリヤなのだそうで、重病だ。
まあ、物の怪とは無関係だろうが、散々な結末である。

後でわかったことは、夕顔が源氏の親友である頭の中将が「常夏の女」と呼んだ愛人だった事を知った。彼女はそのために中将の正妻に憎まれたため、あの家にかくまっていたらしい。
彼女と中央の間には3歳の姫君がいて、のちに玉蔓と呼ばれます。

夕顔は源氏の中でも、今にも通じる魅力的な女性の一人です。

しかし、この物の怪はいったい何か?
怖いですね。

光源氏17歳、夕顔20歳の事です。
posted by とたけけ at 18:07| Comment(0) | TrackBack(1) | 源氏物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック

源氏物語?(夕顔)その2
Excerpt: 住むところ、近所の家で人々の会話まで聞こえる。これでは落ち着かないと、彼は女を連れ出す。連れ込んだ先、源氏の 別荘 である河原院は訪れる人も少なく、荒れていて気味の悪いところでした。女は不安がります。..
Weblog: 別荘情報
Tracked: 2008-05-21 19:41
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。