2007年09月17日

「陰陽師」夢枕獏〜平安朝のホームズ物語


ほろほろと酒を飲んでいる…

正確にはそんな文章ではなかったが、
ボクは個人的に「陰陽師」の中に出てくる
晴明と博雅の酒盛りの場面が好きだ。
瑠璃の杯でほろほろと酒を飲みたいものだといつも思う。
(実際はジョッキでビールをガブガブと…風雅な響きは全くない。)

いつも不思議な雰囲気を漂わせる晴明の邸に事件を持ち込むのが源博雅。この人、醍醐天皇の孫で従三位、れっきとした天上人である。

言い伝えでは
「朱雀門の鬼から名笛「葉二(はふたつ)」をもらい、
琵琶の名器「玄象」を羅城門から探し出し、
逢坂の蝉丸のもとに3年間通いつづけて遂に琵琶の秘曲「流泉(りゅうせん)」「啄木(たくぼく)」を伝授されるなど、今昔物語などの多くの説話に登場する」そうな(これはウィキペディアで調べました。)

そんな博雅をパートナーに平安朝の難事件を解決していく安倍晴明はさしずめシャーロック・ホームズというところだな、博雅がワトソンで…と、思っていたら、文庫本の解説に同じようなことが書いてあった。

うれしいが、少しガッカリ。

マイペースで、ニヒリストの側面を持ちながらプライドと気品を感じさせる晴明は、まさにホームズ、正直で誠実な博雅はワトソンそのものである。「高名な依頼人」が多いのも特徴。

映画「陰陽師」では野村萬斎が格調高い晴明を見せた。博雅は「海猿」の肉体派伊藤英明が誠実だが少し抜けた感じで演じていた。NHKで放送した同名のドラマでは稲垣吾郎がスノッブな晴明を演じ、博雅は何と「元銀蝿ファミリー」の杉本哲太(少しゴツイよな…)

夢枕さんの意図はわからないが、いつまでも続けて欲しい小説である。
posted by とたけけ at 04:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 作家や〜 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月10日

女より幻想を奪わんとする者にもまた危険あり〜名探偵ホームズC花婿失踪事件

冒頭のセリフは、この物語の最後にホームズが語る「ペルシアの古いことわざにあるじゃないかー虎児をとらえんとする者には危険あり、女より幻想を奪わんとする者にもまた危険あり、ということさ。」というセリフから取りました。

この話、簡単に言えば結婚詐欺事件です。
「いつものように、ベーカー街221bの下宿部屋で、暖炉を囲みながらホームズとワトスンが語り合っていると、大きな毛皮のボアを首に巻き、先端にカールした大きな赤い羽根を付けたつばの広い帽子を「デヴォンシャー公爵夫人」のように斜めに被り着飾った大柄な女性がやってきます。彼女の名前はメアリー・サザランド。彼女は母と継父との3人家族で、タイピストの仕事による収入のほかに、亡くなった伯父から相続した遺産の利子があり、これは両親にそのまま渡しているとの事。
 継父のウィンディバンク氏は、普段からなぜか彼女が外出することを大変嫌がっていました。ある時彼女が継父が止めるのをふりきって舞踏会に出かたところ、そこで「頬ひげと口ひげを生やし、声はささやくようで常に何時も光線よけの色眼鏡かけている」ホズマー・エンジェル氏と出会い、恋に落ちました。
しかし、おかしな事にエンジェルが彼女にくれる手紙は、署名までタイプライターで打たれたもの。おまけに詳しい住所も彼女に教えてくれません。エンジェルはウィンディバンク氏がフランスへ出張に行ってしまった隙に、うるさい継父がいない間に結婚してしまおうと持ちかけます。聖書に手を置かせて「何があっても心変わりしない」と永遠の愛を誓わせ、1週間後の結婚を母親と話し合います。母親も彼を気に入って父親の方は何とかするからと言うのです。ところが、再び父親がイギリスに出張した留守の間に結婚式を挙げるため教会へ向かう途中の馬車の中でエンジェル氏はこつ然と姿を消してしまいます。愛しい婚約者の行方を彼女はホームズに捜してもらいに来たと言うわけです。
ホームズは、彼女に「この問題はボクに任せてあなたはこの男の事を忘れてしまいなさい」と忠告するのです。もちろん、彼女は断ります。いつまでも彼を待つと言って…。
なぜ、ホームズは男のことを諦めろと言ったのか?彼にはホズマー・エンジェルの行方がわかっていたのです。そして彼が割り出したエンジェル氏の正体とは…?


初めに、結婚詐欺だと言った通りで、この話は昔ホームズ物語を読んだ人なら知っている内容か?と思いますが、犯人?は義理の父親のウインジバンク氏です。
ウインジバンク氏とエンジェル氏が一緒にいた事がないと言うところからも、これは「入れ替わり」の古典的なトリックです。
ホームズはエンジェルの送るサインまでタイプ打ちした手紙の活字の特徴と、ウインジバンク氏がホームズに送った返信のタイプとが全く同じ特徴を有しているのを証拠として、ホームズはウインジバンクを呼び出しその「罪」を糾弾します。
法律では罰されない事がわかっているウインジバンクは開き直って「冷たいせせら笑い」を浮かべ、「あなたがりこうな人なら、いま法律を犯しているのはわたしじゃなくて自分だということがわかるくらいの頭はもっているはずだ」と言い放ちます。
これに対するホームズの言葉がこの話の中の唯一爽快な部分。
「確かに法律は君をどうすることもできない。だが君ほど罰を受けるに値する人間はいないよ。もしあの娘さんに男友達がいるならきっと君の背中をムチでどやしつけているぞ。」
そしてホームズがムチを手にするそぶりを見せるとずるい男は脱兎の如く通りを全速力で逃げていくのです。名探偵は犯人を方の元に罰することも、無知だが純情でかわいそうな娘を救うこともできなかった。
「冷酷な悪党」ウインジバンクは、なんと妻(メアリーの母親)とグルになって娘をだまし、結婚させないようにして収入が減るのを防ごうとしたのです。
まったくひどい大人ですな。本人はともかく、母親の態度も信じられない。ホームズの言うとおりに「あいつはだんだん悪事を重ねて、やがてはとんでもない犯罪を犯し、絞首台でけりをつける事になるだろう」となったかどうか?人間は欲のために何でもやってしまう。
案外こういう男がぬくぬくと天寿を全うするのが実際の世の中です。少し救いのない、読後の爽快感のない物語です。

もっとも、ホームズは彼女の話を聞きながら真実を知ってしまった。だからこそ、彼女にエンジェル氏を忘れろと言ったわけです。
女嫌いとも言われるホームズの紳士ぶりがこんなところに表れています。

もう少しスッキリしてくれるといいんだけど、しょうがないね。

posted by とたけけ at 00:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 海外 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月08日

源氏物語B(空蝉)


前章の「帚木」に出てくる空蝉(伊予の介の後妻)を諦めきれなかった源氏は、紀伊の守が任国である和歌山県に行った留守の間に、すっかりてなずけてある小君の手引きで三度中川にある紀伊の守の屋敷に忍び込んだ。
何てしつこい男でしょう。
それも人妻の所ですぜ、ダンナ(いや、少し下品だったかしら)

しかし、前に書いたように、この空蝉も、源氏が嫌いではなかったのだ。自分で拒絶しておいて、理性ではあれでよかったと思いながら、心は乱れ、物思いに沈みがちだったという。

そんな中での源氏の行動である。
「嫌よ嫌よも好きのうち」という確信でもあったのか、
「ものにしてしまえばこちらのもの」と思っていたのか。

夏の夕闇にまぎれて、源氏は空蝉義理の娘(先妻の娘)の軒端の荻が碁をうつ姿を見る。
空蝉は小柄でほっそりとし、美人ではないが、つつましく奥ゆかしい人妻だった。
対して、軒端の荻は色白で肥えており、はっきりした目鼻立ち、気品には欠けるが、源氏の興味をそれなりにそそった、とあります。
(軒端の荻の方は色白でグラマーな目鼻立ちのはっきりした女性ってわけで、今でいうグラビアアイドルみたいな人気者になるかもしれないね。まあ、そう言う時代だったのでしょう。)

侍女が寝静まるのを待ち、いよいよ寝所に忍び込んだ源氏でしたが、
間一発、源氏の侵入を察知した空蝉が小袿(うちかけ)を残して逃げ、身を隠した。行きがかり上、源氏は残された軒端の荻と契りを交わした(ヤってしまった)のである。しかしあくまで狙いは空蝉で、本命ではないだけに悔しさをかみしめるしかなかった。

源氏は空蝉が残した小袿を持ち帰り移り香を懐かしむのだった。
空蝉と言えば、その文を持ってくる小君を叱りもするが、彼(源氏)との関わりが結婚前であったなら…と残念に思うのだった。

そもそも「空蝉」が「セミの抜け殻」を意味するもので、この章でいう「抜け殻」は彼女の残した小袿である。
…やっぱりオレは軒端の荻がいい…。
posted by とたけけ at 13:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 源氏物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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